時代小説では今年の暫定ベスト
むこうだんばら亭
著者/訳者名 : 乙川優三郎/著
出版社名 : 新潮社 (ISBN:4-10-439302-9)
発行年月 : 2005年03月
サイズ : 259P 20cm
価格 : 1,575円(税込)
アマゾンのレビューを見たら、主人公孝介は「ゆすらうめ」で既に出会っていたことを知りました。
「椿山」再度読んでみます。
孝助はこの本では居酒屋「いなさ屋」を営みながら、前歴を活かして頼ってくる女性に仕事の斡旋(桂庵)もしている。当時の女性の仕事は当然身を売ることが一つのジャンルとしてある。
そのこと自体を許容しながら、女たちが最悪の状況にならないように孝助は力を尽くしている。
「だんばら」は利根川河口部の三角波のことらしく、多くの漁師がここで命を落としている。
まさに地獄の一歩手前、しかし、そのさらに向こうに豊穣の海がある。
孝助と、彼が苦界から救い出した女「たか」そして、火事場で助けた娘「ぬい」。後半それぞれの姿がきっちりと描き出され、明るいラスト続いていく。
よく計算された、良い本だと思います。乙川さんのベストだと自分は思います。
残念ながら、扱っている題材が暗いためやや読むのは大変ですが、読了後の清々しい満足感はすばらしいと思います。
今の日本は女性の価値が世界一の国ようですが、江戸時代の女性の価値の低さは想像を絶する低さでしょう。働き手でない女を売るのは、家畜を売るのより容易いことであったでしょう。そんな中で登場する女性たちの節度の高さは涙を誘います。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント